包丁やフライパンが持てない。
テニスやゴルフのスイングが大変。
手首に力を入れられない、親指に力を入れられない。
育児や家事、仕事、スポーツなどが原因で腱鞘炎になってしまい、なかなか治らない女性が多くいます。
趣味のスポーツが原因なら、治るまで休むこともできます。
ですが、家事や仕事での作業が負担となって腱鞘炎になる場合、そうもいきません。
仕事を長期に休んだり、最悪辞めなくてはいけなくなってしまう事もあります。
腱鞘炎になったらどうすればいいのでしょうか?
いえ、腱鞘炎にならないようにするにはどうすれば良いのでしょうか?
腱鞘炎になってしまった人も、
なんだか手首や指が痛くて「腱鞘炎?」と思っている人も、
この記事を読むことで「どうすればいいのか?」その対処法が見つかるでしょう。
この記事の目次
数年前、大学病院の鍼灸外来を担当していた時の話です。
他科の医師に鍼灸治療を頼まれました。
なんでも、「明日担当する内視鏡のオペがあるのだけれども、手首が痛くて内視鏡をしっかりと操作できそうにないので何とかならないか?」というものでした。
その先生は手が小さくて内視鏡のグリップするところに合わないために、良く手首が痛くなってしまうとのことでした。
今回は痛みも強く、明日のオペに支障が出そうだと困っていたところ、病院内に東洋医学科の鍼灸外来があるのを知って、藁にもすがる思いで鍼灸を受けてみようと思ったそうです。
人体は筋肉で関節を動かすことで体を動かしています。
筋肉は太い状態ですが、この筋肉が細くなって腱となり、その腱が骨にくっつきます。
筋肉が収縮することで、腱が引っ張られ、骨(関節)が動きます。
これが体の動く仕組みです。
この腱が骨にしっかりと固定されて動きやすくなるために腱を包んでいるものがあります。
それが腱鞘です。
腱をぐるっと腱鞘がつつみ取り巻いていて、この中で腱が行ったり来たりしています。
手首や手指を使いすぎると、この腱鞘と腱がオーバーヒートしてしまい炎症が起こります。
これが腱鞘炎のメカニズムです。
更に、腱鞘の炎症がひどくなると鞘が腫れてきます。
腱鞘が腫れることで、腱の通り道が狭くなってしまうと、腱がひっかかって動きが悪くなります。
これがばね指です。
腱鞘炎とばね指は同じメカニズムの中の、違うステージと理解していただければよいかと思います。
はい、その通りです。
腱鞘炎になるのは、男女別だと女性の方が多い傾向にあります。
これには諸説あって、女性ホルモンの関係が原因なのではと言われています。
今までにも、更年期に入り急に腱鞘炎になった女性の患者さんを何人も診ています。
また、もう一つ大きな原因として考えられるのは、女性の方が総じて筋力が弱いことです。
筋力が弱いと、メインになる筋肉のみに頼って力を使ってしまいます。
筋力があれば、メイン以外の筋肉もサポートに回り分散して力を使うことが出来ます。
育児の時の上腕骨内側上顆炎(いわゆる野球肘)や腱鞘炎は、筋力がない女性が頻繁に赤ちゃんを抱っこする機会が増えて負担がかかったために起こる炎症ですが、筋力があれば他の筋肉にも負担が分担されて炎症が起こらなかった可能性もあります。
女性ホルモンや筋力の弱さが、腱鞘炎が起こりやすい原因となるわけですが・・・
ここからがこの記事の本題です。
鍼灸医学では違った観点から、腱鞘炎の原因を考えます。
それが扁桃腺です。
鍼灸医学の中に、扁桃腺を重視する一派があります。※ハーバード大学医学部の鍼灸の授業でも取り入れられている長野式鍼灸治療法という一派
扁桃腺には喉頭扁桃、咽頭扁桃、舌扁桃、口蓋扁桃という四つの扁桃があって、これらがワルダイエルの咽頭輪というものを形成しています。
喉の奥に存在するこれらの扁桃は、免疫の最前線といえる器官です。
鼻と口を通って外界から入ってきた各種雑菌等が、この扁桃でキャッチされ排除されます。
扁桃腺というと、一昔前はあってもなくてもあまり変わらない器官と認識されていました。
しかし、扁桃腺を取ってしまうと、免疫が弱くなると現在では認識されるようになってきています。
そのため現在では、扁桃腺を簡単に手術で摘除しないようになってきました。
さて、この免疫の最前線基地の扁桃腺ですが、細菌にやられて感染し慢性炎症を起こしてしまうことがあります。
また、ストレス、過労、加齢、外傷、寒冷、アレルギー、環境の変化等により体力が弱り免疫力が落ちることでも、扁桃腺が弱体化し慢性炎症を起こします。
この状態が長く続くと、二次感染症として弱い臓器にトラブルを起こします。
特に結合組織に影響が出やすく、腱や靭帯の炎症の原因となるわけです。
ですから、腱鞘炎の原因として扁桃腺を取り上げましたが、実際には結合組織すべての炎症の原因になりうると考えられるわけです。
上記にある長野式鍼灸治療法では、扁桃を強化することが治療の中で大きなウェートを占めています。
そのため、基本的な治療の中に扁桃強化の鍼灸治療が入っています。
扁桃が弱体化している時には天牖というツボにサインが出ます。
そして、この際に使われるツボは曲池というツボです。
その他、大椎、照海といったツボの使います。
冒頭に出てきた消化器外科の先生の腱鞘炎は、曲池や天牖を中心としたツボを使い、更に腱鞘炎の特効穴である帯脈も使用しました。
その場で痛みが軽減し、翌日の手術は無事おこなうことが出来ました。
扁桃腺は免疫に関与するので、免疫強化としてもこれらのツボは使えます。
免疫強化にはお灸が相性がいいので、これらのツボに日常的にお灸をしていくことは、扁桃腺を強化して、免疫力を高めることができますので、ぜひ習慣的にお灸をしてほしいところです。
扁桃腺を強化し、免疫力をUPするツボ《曲池》
腱鞘炎の特効穴《帯脈》
大成堂中医針灸院
院長 藤田 勇
脳の反射を利用した刺さない鍼を用いて、
病院で検査や治療を受けても解消しない体の悩みに
どうしていいのかわからない人たちを治療。
大学病院(日本医科大学・自治医科大学)で
計10年以上鍼灸外来を担当。
鍼灸臨床歴20年、のべ19,000人以上を治療。
刺す鍼から、刺さない鍼へ
刺さない鍼は、ハーバード大学で認められた鍼灸治療スタイルと、
中国でレジェンドと呼ばれる老師達に学んだテクニックを組み合わせ、
日本で多くの先生達から学んだ知識と技術、
解剖学、生理学、心理学といった西洋医学の知識、
さらに20年の臨床現場での経験を組み合わせて熟成させた、
大成堂オリジナルの技術。
(昼休み13:30~15:00は電話がつながりませんので、LINEかメールをご利用ください)